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[物語]モフモフ王(1)暗闇の森へ

これはある一人の男の奇妙な物語である。

うららかな春の日の午後、そよ風の吹く草原の道を、ある男が機嫌良く森への道を歩いていた。

男は名をオジョロと言った。男には大変美しい髭がフサフサと生えており、この辺ではその髭で有名な男だった。このことを大層自慢にしていており、ことあるごとにその髭を撫で上げていた。

男が歩いて行くと、やがて明るく広がる青空とは対照的な巨大な黒い森が見えてきた。まるで山のような高さであるが、山に木が生えている訳では無く、巨大な木が一面に生えているのだ。森は近づくたびに影を地面に大きく落とし、辺りをどんどん暗くしてゆく。

男は森の入り口へさしかかると歩みを止め、行き先を見つめた。暗闇が森の奥へと延々と続いている。

男は村の長の頼みで、この森の奥に住んでいると言う、モフモフ王に伝言を伝えに来たのだった。

「いくら長の頼みとはいえ、ちょっとこの森はおっかねぇなぁ。第一、モフモフ王って何者だ?王って付くぐらいだから、偉い王様には間違いないだろうけれど。しかし……この森、暗過ぎる……だが、長に頼まれたからにはやめる訳にはいかねぇ。おしっ!」

男は意を決すると、森の中へと踏み込んで行った。

松明をかざし、薄暗い道を進む。コーコー、ギャーギャーと、聞き慣れない鳥の鳴き声や、何か動物が草むらをサワサワと移動する音がする。男は少し恐ろしくなり、懐に忍ばせていた小銃を取り出し、不測の事態に備えながらじりじりと進んだ。

小一時間も進んだだろうか。幸い何事も無くここまで来たが、ついにはあたりは夜のような暗さになった。男は本当に夜になってしまったのではないかと、上を見上げ、月や星を探したが、当然何も見えるはずもなく、そこには木々の間に漆黒の闇が広がるだけだった。男は闇の奥をまじまじと見つめ、さらに左右に広がる闇を肌で感じた。暑くもないのに汗がひとすじ流れた。

「もしもし」

男が振り向くと、いつの間にかそこには一人の老人が佇んでいた。

「ひぃ!」

男はさすがに驚き、一歩飛び退いたかと思うと、その場にへたりこんだ。

「な、な、何者だだだっ!」
「おや、これは失礼致しました。脅かしてしまったようで。おや、その髭……」

老人は男の髭を見つめた。

「あなた、向こうの村から来なすったか」
「えっ?なっ、なぜ分かるのですっ?」
「向こうの村に髭の美しい男がいると噂に聞いてましてな」

男はちょっと機嫌が良くなり、少し笑みを浮かべると、少々強がりながらも言葉を続けた。

「お、おう、その男がオレ、オジョロ様よ」
「おお、そうでしたか。しかし、何故この森の奥に?」
「む、村の長にモフモフ王とやらへの伝言を頼まれてな。ハハハッ!」
「おお、モフモフ王様の元へ行きなさるか。では私がこの先ご案内申し上げましょう」
「へ?そ、そいつぁ、ありがてぇが、御老人に手間をかけさせる訳にもいかねぇ。……だ、大丈夫、オレ様ならこんな森ぐらい屁でもねぇ!」
「いえいえ、あなた様はお客様ですから。私、モフモフ王にお使えする者で御座います」
「お、おぅ?」
「馬車を呼びましょう」

そう言うと老人は手を二度程パンパンと叩いた。やがて暗闇の奥からパカポコと馬車が現れた。男は一瞬安堵の情に包まれたが、次の瞬間、凍りついた。馬車を引いていた馬が燃える馬なのである。足元から炎に包まれ燃えている。しかし生きている。また、目が大きく光り、あたりを照らしている。男はこれは魔の馬だと直感した。

「ささ、お乗り下され」

男は一瞬悩み、あたりを見廻したが、一面の闇を確認すると諦めて馬車へと乗り込んだ。老人が馬に鞭を打つとガタゴトと馬車は進み始め、やがて森の奥へと消えて行った。

<続く>

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