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[物語]レジ待ちのレジー

私の名は財家新一。ただのしがない貧乏学生である。

どうも最近おかしい。レジに並ぶ度に前に並んでいるおばちゃんがトラブるのである。あるおばちゃんは「あら、サイフどこ行ったかしら?」またあるおばちゃんは「これ向こうのレジで無いとダメだよね?」とか。まあ些細なことなのだけれど、実に時間がかかる。

物事にはエスカレートする法則がある。それに乗っ取ると、そのうちスーパーレジ待ちうっかりおばちゃんが大量発生するはずである。つまり人類は誰もスーパーで買物が出来なくなり、食料を調達することが出来なくなるのだ。つまり最終的に人類は餓死で滅亡する。なんということだ。

……とか言うことを考えつつ今日もスーパーへやって来た。カレーを作らんがためである。例によって前におばちゃんが並んでいる。

「お支払いは?」
「カードで」
ゴソゴソ。
「……」
イヤな予感がしたので半目で見ていた。
「あれ、カード…カード…あらやだ、ちょっと待ってね…おかしい…ないわ」
「お客様、現金はお持ちでは無いですか?」
すかさずレジのおねーちゃんがフォローする。だが聞いていない。
「いやーね。あったはずなのにね。どこかしら〜」
ガサゴソ。
この調子である。レジのおねーちゃんの口がパクパクしている。

「こんにちは」
後ろでかわいい声がした。振り返ってみるとそこには金髪碧眼ツインテールの少女が居た。
「私レジー。おにいちゃんは何をやっているの?」
何ってレジ待ちに決まっているじゃないかとか思いつつ。
「…ちょっと買物にね」
とか答えているとにじりよってきた。青い目にハイライトが入っている。
「…レジ待ちの相が出てるわね」
「レジ待ちの相?」
「つまり……原因はいくつか考えられるけど、おにいちゃんはレジに並ぶと待つ運命にあるってこと」
「…ほう」
あまり関わりにならない方がいいかと思ったのでとりらえずほうと相づちを打っておいた。
「このままだとさらに運が悪くなり、最終的に……」
「最終的に……?」
「……餓死ね」
何と言うことだ人類の行く末を哀れんでいる場合では無かった。オレか。オレなのか。

そうこうしているうちに前のおばちゃんがカードを見つけたらしく、レジは進んだ。
オレも会計を済ませ、スーパーを出ようとした。
ガシッ。
腕を掴まれて振り返るとさきほどのレジーがそこにいた。
レジーはオレの腕をグイグイ引っ張って近くの神社へと連れて行った。
着いた先はトラストミー神社と言う名前だった。
「おじさん!相の悪い人を連れてきたわ!」
そう叫んで鈴を鳴らすと、奥から一人の老人が出てきた。金髪碧眼ではないが、顔の作りが日本人とはちょっと違う気がする。
「ほう……またいたのか……これは……」
オレの方をマジマジと見つめ、深刻そうな顔をする。いや、するな。
「これはお祓いをせねばならないようだな。青年、せねば死ぬぞ」
これは…どう対処したらいいのやら。まず、そのレジ待ちの相とは何なのか?
「ちょっと待って下さい。この子に無理矢理ここに連れて来られましたけれど、訳が分かりません。その、レジ待ちの相とか、お祓いとか。そんなの聞いたこと無いし…」
老人はきょとんとして答える。
「まあ、あれだな、確かに世間一般には知られていない。トラストミー神社では古くから伝わる由緒正しい伝承なのじゃ。知らぬのも無理は無い」
待って待って。
「由緒正しい伝承にレジ待ちとか無いんじゃ?」
「いやほら、アメリカの方の由緒だから」
「はあ……で、お祓いするのにお金かかるんでしょう?」
「少々エネルギーが必要なのでな。5万9千800円でどうじゃ?」
「遠慮しときます!」

「いやまてまて、とにかくだ、お祓いせねば青年、そのうち死んでしまうぞ?」
「いいです、ご遠慮します!」
そう言うとオレはダッシュで夕日へ向かって走った。

しかしである。日ごとにオレのレジ待ちの相……いや、それかどうかは分からないが、レジ待ちの時間は長くなって行ったのだった。
ある時は大富豪のおばちゃんがレジカゴ100個に満載してレジに並んでいたり、ある時は払わずにもって返ろうとする客が人類の平等とお金とは何なのかを長々と力説し並んでいたり。
これは……。まだ死ぬほどじゃない。でも……。

オレは愛機PS5を高値で売り払い、トラストミー神社へと向かった。

「すいません、お祓いお願いします!」
老人は境内の落ち葉をはらっていた手を止めると、こちらを一瞥した。

「よろしい、ではこちらへ来たまえ」
本殿の扉が開くとその奥にもう一つやたらハイテクな扉があった。
老人が指を扉脇のパネルにタッチし、言葉を発する。
「ロジャーヒア。ドアオープン」
上から降りてきたレーザー光が老人をスキャンする。
「カクニンシマシタ。ドウゾ」
ドアが開いた。

「あの…ここ……神社?」
「神社」

ドアは地下通路へと繋がっており、その先にはさらに頑丈そうな空間が待ち構えていた。
そこは暗闇の電子の空間で、壁面には計器の明かりが無数に煌めき走っており、機械が無数に稼働している音がしている。ハイテクだ。

「神社?」
「神社」

老人がスポットライトを点けると、中央に台が見えた。
「そこに横になりたまえ」
言われるがままに横になると、手足が固定され、透明なバリヤーが周りに展開された。

「対ショック対閃光防御!」
「イェス、おじさま!」

天井付近から巨大なメカが降りてきて閃光が放たれる。その閃光の向かう先は……やっぱオレか。
「うわぁぁぁぁぁぁああああぁぁ!」
オレが輝いた。

輝けるオレの口から何か得体のしれない物体がもやもやっと出てきた。
エクトプラズム……?これが……オレに憑いていた?

「出よ、バルギオース!」
そう言うと、何か小ぶりのタンクのようなメカが床面から出てきた。

「吸引!」

バルギオスが全てを吸い込んで行く。そして辺りには何も無くなり、静寂が戻った。
「よし、回収完了。レジー、地下タンクにこれを入れておけ」
そう言うとバルギオスから抜き取った何かのカートリッジをレジーに投げて渡した。
「イェス、おじさま!」

外へ出ると雲一つない青空が広がっていた。…こうしてオレのレジ待ちの相は落ちたらしい。
「青年、気をつけてな。くれぐれも会計の前には小銭を用意しておくのじゃぞ」
「じゃぞ」
「はい……ありがとうございます」

今では特にレジに並ぶことも無く……。どうやら御利益があったようだ。あったんじゃないかな。まあ、もうオレには関係無いや。

……とか言うことを考えつつ、今日もスーパーへやって来た。カレーうどんを作らんがためである。

「あなた、レジ待ちの相が出ているわ!」
レジに並んだオレの隣のレジから聞いたことのあるような声が……いや、見ない見ない。そして聞かなかったことにしよう。全ては終わったのだ。

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