hakusyoku
ある日のトンボの舞う夏の夕暮れのこと、祐子はタカシと一緒に花火見物をするために河原の土手へ向かっていた。
「タカシ、見てほら一番星!」
「ああ、そうだね…」
タカシはその星を見て一瞬にして悟った(ガミラス星が白色矮星を地球に向けて放ったか…)そんな訳ない。そんな訳ないし、設定が間違ってるよとテレパシストであるところの祐子は突っ込もうとしたが、浴衣の裾が風にめくられたのでそれに気をとられてしまい、言い出せなかった。タカシも祐子のフトモモに一瞬にして気をとられてしまい、地球を救う使命があるとか、迫り来る宇宙からの脅威とか、そんなことはどうでも良くなった。そもそもそんな使命とか無い。ただの高校生だから。
「タカシ……」
「祐子……」
見つめ合う二人の背後に、実は本当に白色矮星が迫っていたのだったが、そんなものはもうどうでも良かった。どうでも良かったんだってば。


けものや横町
その店は小路の奥にあった。
「けものや…?」
そう看板に書いてある。はて、何の店だろう。中道は思った。
彼の名は中道四朗。このお話の主人公、風来の食いしん坊である。
今日は吉祥寺にやって来た。昼下がり、ふと見かけた見慣れない小路にふらっと入ってみたのだが、こんな店があるとは。四朗はかなりのグルメ通で数多のお店を見聞きしているが、この店は聞いたことが無い。吉祥寺やるな。実に奥が深い。キッチョージブラボーである。ブラキッチョーである。
しかし、ハラが減りすぎだ。クラクラする。

「はて、何のお店だろう……」
四朗はガラス越しに中の様子を覗いてみたが、どうも湯気で曇っているらしく様子が良く分からない。
接客の店員が一人と……奥の厨房にもう一人いるようだ。
「けもの…というからには何かの肉だろう。どれ、試しに入ってみるか」
ガラガラッ

>>続きを読む